イデアルどうしの和と差と積を定義する
可換環RのイデアルI,Jについて考えます。
I+Jと書けば、Iの任意の元aとJの任意の元bの和の集合ということにしましょう。
IJと書けば、Iの任意の元aとJの任意の元bの積の「有限和」の集合ということにしましょう。
たとえば、I+Jという集合の元は何個あるでしょうか。
Iの元がx個、Jの元がy個あれば、xy個ということになります。
IJという集合の元は何個あるでしょうか。
a1*b3+a2*b9+a4*b1などもIJの元です。
ということで、項が1つのものはxy個、項が2つのものはxy*xy個、項が3つのものはxy*xy*xy個あり、項がxのものは…というふうに、相当数の元があります。
xとyの個数の違いによって、元の数は異なります。また、項の数が違っても、たまたま同じ数値となる元もあります。
実は、集合IJというのは、「最小のイデアル」のときの論ととても似ています。考えてみてください。詳細は割愛します。
I+Jがイデアルかどうか
集合I+Jは、a+bを元に持ちます。
集合I+Jが可換環Rのイデアルであるためには、任意の2つの元の和がやはり集合I+Jの元になっていなければなりません。
(a+b)+(a’+b’)=(a+a’)+(b+b’)となっており、(a+a’)はIの元、(b+b’)はJの元なので、これはI+Jの元になっています。
次に、可換環Rの任意の元rとの積ですが、
r(a+b)=ra+rbであり、raはIの元、rbはJの元なので、確かにI+Jの元となっています。
集合IJはイデアルかどうか
上と同様に、abの有限和を元にもつ集合IJの、元abと元a’b’の和ab+a’b’がIJの元になっているかどうか確認します。IJの元は、abの有限和ですから、やはり、ab+a’b’はIJの元になっています。これは、いずれの元についても成り立ちます。
次に、可換環Rの任意の元rと集合IJの任意の元Σabの積が、集合IJの元かどうかを確認します。
r*(Σab)=ra1*b1+ra2*b2+…となって、ra1もra2もIがイデアルなので、Iの元になっていますから、Iの元とJの元の積の有限和になっています。ということで、やはりr*(Σab)は集合IJの元です。
IかつJを考える
I∩Jはイデアルかどうか
元a,bがI∩Jであれば、a+bはIの元、a+bはJの元であるから、a+bはI∩Jの元になっています。また、可換環Rの元rとの積raは、Iの元でもあり、Jの元でもあるので、I∩Jの元になっています。
従って、集合I∩Jはイデアルです。
イデアルIJとイデアルI∩Jの関係