(ℕ,|)と(イ全(ℤ),⊆)の関係
(ℕ, |)における元aについて、可換環ℤにおいて元aを含む最小のイデアルを(a)としたとき(可換環ℤは単項イデアル整域ですので、結局、(a)は単項イデアルとなります。単項イデアルとは、単一の元により生成されたイデアルのことです。最小である、とは、元a以外にもいろいろ含むイデアルを考えると、カオス(無茶苦茶)になるからです。)、
元aと(a)を1対1対応させてみましょう。
すると、対応されたほうの順序集合こそが、順序集合(イ全(ℤ),⊆)になっています。興味深いことに、「順序」が逆になっており、この二つともが、上限と下限を任意の元について設定できる「束」ですが、「双対な束」となっていることがわかります。
これは、やってみないとよくわかりません。
順序集合(ℕ、|)については別記の通り、
元a,bの上限Lは、約数の存在によって順序がきまることから、aとbの最小公倍数でした。
さて、順序集合(イ全(ℤ),⊆)について、
元(a),元(b)の上限は、イデアルの性質から、(a)∩(b)でした。
実は、(a)∩(b)というものは、(L)となっています。冷静に考えればわかるのですが、ここでは、ℕとℤについて話していますので、すなわち、整数を考えると、例えばa=2, b=3として、L=6です。(6)とは、6の倍数集合のイデアルです。確かに、2の倍数集合のイデアルも、3の倍数集合のイデアルも、この6の倍数集合のイデアルを完全に含んでいるのがわかると思います。
直感的な話ですが、6の倍数集合は、イデアルとしては、小さくなりますので、(ℕ、|)と順序関係が逆なことはピンとくるのではないでしょうか。
ということで、この元aと元(a)の1対1の対応というのは、双対な束を作ることになっています。
念のため、a、bの最大公約数Dについても考えます。
やはり、(a)+(b)=(D)になっています。
なお、(a)+(b)=(a,b)とも記載できます。
a=4, b=6, D=2を考えればわかるでしょう。
2の倍数集合のイデアルは、4の倍数集合のイデアルと、6の倍数集合のイデアルを完全に含んでいます。
モジュラー束
ここで、a≦cのとき、
「aとbの上限」とcの下限=aと「bとcとの下限」との上限
が、あらゆるbについて成り立つ場合を考えます。
実は、上記の2つの順序集合については、これが成り立っています。