多項式
多項式というのは、項が2つ以上あるものです。単項式とは、項が1つのものです。
例えば、x+3xは、もちろん=4xとしたくなりますが、このままでは、多項式です。正確には、1変数多項式です。
x+yは、2変数多項式です。
ここで、xiを、1変数とみなすルールにしましょう。
もちろん、x1とx2が異なるものになることもあります。
その場合、x1とx2を2つの変数とみることも、もちろん可能です。要は、どのように定義をしたかが重要です。
例えば、クラスの身長の傾向を知りたいとき、A君の身長はx1で、B君の身長はx2だとしましょう。別々の変数として扱っても良いわけです。
ところが、学年をy、性別をzとおくことを考えると、x1とx2と、…xnまでを、一つの身長という変数として捉える考え方もアリだ、という発想ができます。
そういう意味で、ここでは、aiを1変数と考えてみましょう。
列
身長をずらっと並べるのは面倒です。
ここで、慎重を並べたものを、(ai)と表記して(イデアルと同じカッコを使うことになりますが、ご容赦を。)、「列」を表すルールにしてみましょう。ということは、(ai)={a1,a2,a3,…an}となるわけです。
列の加法と乗法
(ai)+(bi)=(ai+bi)と定義しましょう。
(ai)*(bj)=(aのあらゆるものi個と、bのあらゆるものj個の積の有限和で、i+jが0~i+jの列)
と定義しましょう。少しわかりにくいかもしれませんが、すなわち、a0b0, a0b1+a1b0, a0b2+a1b1+a2b0, a0b3+a1b2+a2b1+a3b0, …となります。
形式的べき級数
可換環の元において、0でない元が無限に並んだ「列」を形式的べき級数と呼びましょう。
係数
普通、係数とは、xについての多項式3x+y+tについては、3です。
しかし、ここでは、上記の列の各元を係数とよぶことにしましょう。
係数による列なので係数列とよびましょう。
合成積
係数列どうしにも乗法を定義することができます。
これを、合成積とよびましょう。
合成積と、通常の積は、結果が一致します。
可換環R上の形式的べき級数環
可換環Rの係数列の集合は、可換環を成すことがわかっています。
これは、結合律や零元(0,0,0,…)単位元(1,0,0,0…)(最初の項が1で、 あとは0で良いのです。これは、例えば、xについて、2番目の項も1だと、x+1をかけることになってしまい、3番目の項も1だと、x^2+x+1をかけることになるからです)、可換律が成立するので、自明です。
よって、可換環Rの係数列の集合を、形式的べき級数環とよびましょう。
ついでにいえば、有限個の元をもつ係数列は、形式的べき級数環の部分集合ということになり、しかも環なので、部分環です。
R上の多項式環
これを、R上の多項式環とよびましょう。
なにということはなく、我々の良く知る、多項式の概念を、少し広く捉えただけのことです。
形式的べき級数環はR-加群である
R-加群というのは、
a,b∈R、x,y∈Mとして、
性質1:a(x+y)=ax+ay
性質2:(a+b)x=ax+bx
性質3:(ab)x=a(bx)
性質4:1x=x
が成立することです(別記事)。
形式的べき級数環は、R-加群です。
線形独立
その部分集合Kを考えます。
Kのさらなる部分集合xiについて、r0x0+r1x1+r2x2+…rnxn=0だとします。
このとき、必ず、r0,r1,r2,…rnすべてが0である、というときは、KはR上、線形独立である、とよぶことにしましょう。
直感的には、xiは、お互いに何の影響も与えない、ということです。
例えば、テストの総得点が0であることは、英語0点、数学0点、国語0点である、というようなことです。
もし、数学0点だったら、英語も0点になる、というルールがあるなら、英語100点、数学0点でも総得点0点になりうるわけで、その場合、線形独立ではありません。
生成系
Rー加群Mの部分集合Kが生成するR-加群のうち、
最小のものがR-加群Mそのものである場合、KをMの生成系とよぶことにしましょう。
自由加群
線形独立であり、生成系を有するRー加群を、R上の自由加群とよぶことにしましょう。
その部分集合を基底とよぶことにしましょう。
モニック多項式(単多項式)
多項式の最高次の項の係数が1であるとき、モニック多項式、あるいは単多項式とよびましょう。
可換環上の多項式はすべて、単多項式で割ることができます。もちろん、割り切ることができるとは限りません。
可換環上の多項式環においても、除法の原理が成立する
なお、割り算は、余りを、最高次数が商よりも小さいものとすれば、一パターンのみに決まります。