多変数多項式環の微分
多変数多項式環の微分を考えます。
ものものしい言い回しですが、すなわち、変数が、X,Y,Z,…といろいろあるような環RをR[X,Y,X,…]と表すと、
結局は、いずれかの変数に着目した導関数を求めることができます。
着目していない変数は、その導関数を求めるときには、定数扱いになります。
たとえば、Xに着目すると、多変数多項式環Rは、一変数多項式環Rに変化します(中身はかわりませんが)。
そのとき、導関数を求めるための微分作用素は、
σ/σXとなります。
Yに着目するなら、σ/σYとなります。
微分作用素
導関数を求めるときの記号で、たとえばσ/σXの後に関数f(X)がつづけば、f'(X)を指します。当然ながら、この記号は、分数ではないので、分母分枝をσで割って1/Xなどということはありません。
ここでのσは、sのギリシャ文字で、smallの頭文字ですので、
本質的には、σXは、「Xをほんのすこし増加させたとき」
σは、「Xをほんのすこし増加させたときの、あとにつづく関数f(X)の変化量」
ということになるので、σ/σXは、特定の地点Xからの微量変化を考えたときに、変化量の割合をみていることになります。
Xについての微分をした後でYについての微分ができる
たとえば、2変数多項式環R[X,Y]について、
関数f(X,Y)=aX^3+bXY+cY^2であったとして、
(この時点ではXもYも変数として認めている)
いったんYを定数とすると、表記上、f(X,Y)のことをf(X)と表すようになって(中身は変わらないが)
σ/σX[(f(X)]=3aX^2+bYです。
(上記の[]はパソコン表記にわかりやすいように使っているだけで、教科書的ではありません。)
さらにこれをYに関する変数とみるのは自由ですから、仮にg(Y)とおいても構いません。
σ/σY[g(Y)]=σ/σY[(3aX^2+bY)]=bとなります。
このように、異なる変数に関する微分を組み合わせることが可能です。
さて、2度微分をしたので、微分作用素も積のような形で書いて良いこととして、
σ/σX*σ/σY[f(X,Y)]=bということになります。
この書き方をする場合は、必ず、順番は書いた通りとしましょう。
ところが、
σ/σY*σ/σX[f(Y,X)]を計算してみると、実は、結局はbとなっています。
ということで、微分作用素σ/σX*σ/σYは、σ/σX*σ/σYと同じ結果を生みます。
いずれにせよ、もう少しまとめた書き方で、
σ/σX*σ/σYを、σ^2/σXσYと表して良いことにしましょう。