集合A上に同値関係が定義されている
唐突ですが、同値関係という考え方を作ってみます。
「同値関係」
まず、集合の任意の2元の関係∽を考えます。任意の3元a,b,cについて
a∽aが成り立つことを、反射律とよびましょう。
a∽bならばb∽aが成り立つことを、対称律とよびましょう。
a∽b、b∽cならば、a∽cが成り立つことを、推移律とよびましょう。
これらを集合Aの任意の2元が満たすとき、
「集合A上に同値関係∽が定義されている」と表現することにしましょう。
集合Aに、お互いに同値な元がたくさんあることを考えます。
もちろん、全てが同値とはかぎりません。
同値類
たとえば、集合A={a,b,c,d,e}として、
a∽b∽cであって、d∽eであったとしても、
c∽dとはかぎりません。
この場合、同値な元をすべて集めてAの部分集合(部分集合とは、集合の一部を集めて、新たな集合としたものです。)をいくつも作ると、
A1≔Aabc={a,b,c}、A2≔Ade={d,e}となります。
≔は定義する、の意味です。
当然ながら、A1とA2の元どうしは、重なりません。
また、A1の元とA2の元すべてをあわせると、集合Aそのものになります。
「同値類」
同値関係が成立する元の部分集合なので、
部分集合A1やA2を同値類とよぶことにしましょう。
商集合
すなわち、同値関係を定義すると、集合を同値類によって分割できることになります。
「商集合」
さて、同値類は集合を分割(商を出す)しますから、
同値類A1とA2をあわせて、商集合とよぶことにしましょう。
表記は、A/∽と書くことにしましょう。
直積
集合Aの任意の元aと、集合Bの任意の元bのすべての「組合わせ」
を考えましょう。
元を、1つの数ではなく、2つの数の組み合わせでも良いことにしましょう。
「直積」
集合Aの任意の元aと集合Bの任意の元bの組み合わせ(a,b)を元にもつ集合Cについて、
集合Cは集合Aと集合Bの直積である、と定義しましょう。
当然、集合Aの元の数(位数といいます)が10で、集合Bの位数が10であれば、10*10=100なので、集合Cの位数は100になります。
有理数の定義
整数集合ℤと、整数から0を除いた集合ℤ-0との直積集合Aを考えます。
A=ℤXℤ-0={(a,b) | a,b∈ℤ, b≠0}
となります。
| a,b∈ℤ, b≠0の部分の説明ですが、
| は、これからa,bについての説明をしますよ、という意味で、
∈は、集合の元ですよ、という説明です。
もちろん、{}は、元を囲む記号です。
おわかりかと思いますが、{a,b}では、2つの元a,bがあるのに対し、{(a,b)}は、(a,b)という1つの「a,b組み合わせ元」があるので、全く意味が違います。
Fracture(ℤ)
さて、集合Aの組み合わせ元について、
1対1対応するa/bという分数の元をもつ集合Bを考えます。
つまり、集合Aの元(a,b)にたいして、集合Bは元a/bをもつわけです。
分数をFractureとよぶことと、a,bはもともと整数だったことから、
Frac(ℤ)という表現を使ってみます。
Frac(ℤ)≔集合B={a/b | a,b∈ℤ, b≠0}としましょう。
有理数
さて、ここで同値関係∽を考えます。
Frac(ℤ)において、ab’=a’bのとき、a/b∽a’/b’と定義しましょう。
有理数ℚを、Frac(ℤ)の同値類すべての集合(商集合)と定義します。
表現としては、ℚ≔Frac(ℤ)/∽となります。
整数は有理数の一部である
もちろんb=1のときは、a/bは整数になるので、
ℤ⊂ℚとなります。
なお、⊂とは、集合が集合に含まれるという意味です。
整数は有理数の一部です。
有理数の加法と乗法を定義する
有理数についても、
加法:a/b+c/d=(ad+bc)/bd
乗法:(a/b)*(c/d)=ac/bd
と定義しましょう。
なお、()は本来不要ですが、わかりやすくするために用いています。
有理数集合ℚは可換群ではない(元0において単位元が存在しない)。しかし、元0を除いた有理数集合ℚ-0(あるいはℚxなどと表現してもよい)は、可換群である。
有理数集合ℚのことを、単にℚと言っても良いことにしましょう。
ℚは、加法について、
結合律、零元、逆元、可換律のいずれも満たすので、加法群です。
ℚは、乗法について、
結合律、単位元、逆元、可換律のうち、元0について、単位元の条件を満たすことができません(0に何をかけても0で、1になりません)。
つまり、ℚは乗法群ではありません。
逆に言えば、元0を除けば、乗法群になりますので、可換群(アーベル群)になります。
ℚは可換環であり、整域である
分配律が成立しますので、乗法の逆元は別になくても条件を満たすのですが、ℚは可換環でもあります。
さらに、零因子は0しか存在しませんので、
そのような可換環ℚは整域です。
体
可換環において0以外の元がすべて可逆元(単元ともいいます)
であるとき、その可換環を体とよぶことにしましょう。
ℚは、可換環でもあります。そして、0以外の元がすべて逆元をもつ、すなわち、可逆元になっていますので、ℚは体です。
ℚは順序体である
順序環が体であるとき、順序体である、と表現しましょう。
当然、有理数にも順序が定義できます。