素数と因数と分解の話
別記した等式 AC+AD+BC+BD=(A+B)(C+D)ですが、
因数分解というからには、何か大きなものを小さなものに分解するのだと
直感的に考えます。
ここで大きなものは、AC+AD+BC+BDで、小さなものは(A+B)(C+D)
となります。何が大きいのかというと、「項の数」です。
4個が1個になっています。
直感的には、カッコもついてかえってややこしくなっているかもしれませんが、
項の数的には、小さくなっている、すなわち分解されているわけです。
なぜ項の数が小さくなるかといえば、それは因数の「積」になることで、項がひとまとめになっているからです。
さて、因数とは、各々の項における「構成要素」です。
たとえば項ABにおいては因数はAとBです。
項(A+B)(C+D)においては因数は(A+B)と(C+D)です。
素数?素因数分解?
素数は、因数よりも制限が厳しいですが、
やはり因数の一種です。
正直、素因数分解とかいうから話が??となるわけで、
単に素数分解で良いわけです。
ただ、たとえば15=3*5としたときに、
3は素数でもあれば、因数でもあるわけなので、素因数分解というネーミングになるわけです。
素数というのは、2以上で、自分自身と1以外の約数をもたないものです。
具体的には、2,3,5,7,11,13,17,19…となっていきます。
試しに、それ以外の数字が、かならず素数の積で示せることを確かめるべきです。
素数は、このように実験すればただちに直感的に理解できます。
因数分解の方法
具体的な方法ですが、直感数学ですので、
まず、出題する側に回ってみます。
なるべく難しい問題を出そうと頭をひねりますと、
\((x+a)(x+b)=x^2+(b+a)x+a*b=x^2+(a+b)x+ab\)になって、(まあb+aもa+bもほとんど変わりませんが…)
例えば、\((x+2)(x+3)=x^2+(3+2)x+2*3=x^2+5x+6\)なわけですが、
仮に\(x^2+5x+6=?\)と出題すると、(x+a)(x+b)の形というのがすぐにバレて、
かつ、「a+b=5、ab=6となるようなa,bは何だ?」という簡単な問題になってしまいます。(もちろん正解はa=2,b=3となります)
問題を難しくする秘策を一緒に考える
\(x^2+5x+6=?\)
をベースに問題を難しくしてみます。
まず、特定の数字「3」を掛けてみます。
\(3x^2+15x+18=?\)
少し難しいようにみえます。慣れてきたらすぐばれそうです。
では、式x+1を掛けてみます。計算は\((x^2+5x+6)(x+1)=x^3+5x^2+6x+x^2+5x+6=x^3+(1+5)x^2+(5*1+6*1)x+6*1=x^3+6x^2+11x+6\)ですので、
\(x^3+6x^2+11x+6=?\)という問題となり、少し難くみえます。
しかし、慣れてくると、この\(x^3\)がひっかかるようになり、
xの3乗=??ということは、(xの1乗+??)(xの2乗+??)の形か、
(xの1乗+??)(xの1乗+??)(xの1乗+??)の形くらいしか無いわけですから、
(xの1乗+??)(xの1乗+??)(xの1乗+??)の形であったとしても、
いったん(xの1乗+??)(xの2乗+??)の形にできるはずですから、
\(x^3+6x^2+11x+6=(x+A)(x^2+Bx+C)\)
と仮定すると、展開して、6=1+B, 11=C+AB, 6=ACを満たすA,B,Cを求めれば
良いわけですから、何の苦労もなくB=5が求まり、C+5A=11とAC=6から、
仮にA,Cを整数とすればA=1,2,3,6しかなく、いずれはA=1,C=6にたどり着きます。
というより、Aが例えば1/2などの分数だったとしても因数分解を考えることはもちろん可能ですが、そうすると展開した式に分数が入って「バレて」しまいます。
さて、\(x^2+5x+6=?\)を分数をいれて混乱させようとしましょう。
\(x^2/2+5/2x+3=?\)とします。しかし残念ながら2で割ったことはバレバレですので、1/2でくくって、\(1/2(x^2+5x+6)=?\)という問題に戻されてしまいます。
\(x^2+5x+6=?\)に「y+1」を掛けて混乱させてみましょう。
\((x^2+5x+6)(y+1)=x^2y+x^2+5xy+5x+6y+6=x^2y+x^2+5yx+5x+6y+6\)
xの次数(xの何乗か、という数字)は順に2,2,1,1,0でまとめてみました。
このまとめ方は、何でもよい(ややこしい問題にしたいのであれば順番は無茶苦茶でも良いわけです)のですが、
しかし、冷静な相手だと、yがあやしいことに気づかれます。
つまり、最大のxの次数は2なので、少なくとも\((x^2+??)(y+??)\)
の形になることは想像できるわけです。
ということで、yの次数で整理されてしまい、
\(x^2y+x^2+5yx+5x+6y+6)=(x^2+5x+6)y+(x^2+5x+6)\)
となって、一発で(y+1)が掛けられていることがバレてしまいます。
\(x^2+5x+6=?\)
のところに、xをA+B+1で置き換えてしまいましょう。
\((A+B+1)^2+5(A+B+1)+6=((A^2+2AB+B^2)+2(A+B)+1)+5A+5B+5+6=
A^2+2AB+B^2+7A+7B+12?\)となります。
さて、これはかなり難しそうです。
しかしこの場合も、Aの次数が2、Bの次数が2と同じなので、
A,Bどちらでもよいですが、整理して
\(A^2+(2B+7)A+(B^2+7B+12)=(A+C)(A+D)\)となることが想像できます。
C+D=2B+7で、CD=(B^2+7B+12)となるわけですから、
C=(B+??)、D=(B+??)の形になることは想像できます。
結局、C=(B+3)、D=(B+4)がすぐにバレてしまいます。
ということで、
\(A^2+(2B+7)A+(B^2+7B+12)=(A+B+3)(A+B+4)\)となります。
面白い話ですが、
\((A+B+1)^2+5(A+B+1)+6=?\)として出題すると、
一定の人数は、いったん展開してしまうかもしれません。
そして、上のような手順なら確かに正解にたどり着きます。
ところが、「置き換え」を知っていると、A+B+1をXとおきかえることで、
(X+2)(X+3)の形に因数分解ができることに気づき、再びA+B+1に戻せば、
(A+B+1+2)(A+B+1+3)すなわち、(A+B+3)(A+B+4)となることがわかります。