極座標
別記のように、複素数平面について、
直交座標(x,y)=(1,2)は、極座標(r,Θ)=(半径√3、64度くらい)
としても、同じ点を示すことが確認できたと思います。
これは、一般に、x=rcosΘ、y=rsinΘとして表現できることを意味しています。
同じことですが、r*cosΘ=x、r*sinΘ=yと書いた方が一発でわかるかもしれません。
なお、\(sin^2\theta+cos^2\theta=1\)ですから、
\(r^2(cos^2\theta+sin^2\theta)=r^2=x^2+y^2)\)となっているのがわかると思います。
一般化(複素数平面である必要はない)
実は、おきづきかもしれませんが、
複素数平面でなくても、一般に、直交座標を極座標として表現することは
もちろん可能です。なぜあまりそういうことをしないのか、
そして、複素数平面に限ってそういうことをするのかといえば、
一般には、それほど利点がないからです。
直交座標のほうがシンプルです。
複素数平面に関しては、何かしら利点があることになります。
複素数平面と極座標
複素数α=a+bi、複素数β=c+diとしましょう。
a,b,c,dはもちろん実数、iは虚数単位です。
複素数平面において、直交座標表示で
αは点(a,b)、βは点(c,d)に対応していることはわかると思います。
極座標表示では、
αは点(r1,Θ1)、βは点(r2, Θ2)としましょう。
ここで、元となる複素数αとβの積を考えます。
(a+bi)(c+di)=ac-bd+(ad+bc)iとなっています。iの2乗は-1です。
さて、定義から、a,bとr1,Θ1の関係式は、a=r1*cosΘ1、b=r1sinΘ1でした。
c,dについても同じです。
ですので、αとβの積は、
ac-bd+(ad+bc)i=(r1cosΘ1*r2cosΘ2-r1sinΘ1*r2sinΘ2)+(r1cosΘ1*r2sinΘ2+r1sinΘ1*r2cosΘ2)iとなって、
=r1r2(cosΘ1*cosΘ2-sinΘ1*sinΘ2)
+r1r2(cosΘ1*sinΘ2+sinΘ1*cosΘ2)i
ここで、三角関数の定理(加法定理)を思い出すと、
加法定理
\(\sin(x \pm y)=\sin(x)\cos(y)\pm \cos(x)\sin(y) \)
\(\cos(x \pm y)=\cos(x)\cos(y)\mp \sin(x)\sin(y) \)
\(\tan(x \pm y)=\displaystyle\frac{\tan(x) \pm \tan(y)}{1 \mp \tan(x)\tan(y)} \)
となりますから(別記予定)、
r1r2(cosΘ1*cosΘ2-sinΘ1*sinΘ2)
+r1r2(cosΘ1*sinΘ2+sinΘ1*cosΘ2)i
=r1r2{cos(Θ1+Θ2)+sin(Θ1+Θ2)}となります。
面白いことに、これを再び極座標の形式に表すと、
(r1r2, Θ1+Θ2)となるのがわかると思います。
ですので、複素数αとβの積をγ(ガンマ)とすれば、
極座標において、rを一般に動径、Θを一般に偏角と呼ぶこととして、
「極座標表示において、ガンマの動径r3は、αの動径r1とβの動径r2の積になっている」ことと、
「極座標表示において、ガンマの偏角Θ3は、αの偏角Θ1とβの偏角Θ2の和になっている」ことがわかります。
複素数平面においては、αに対応する点とβに対応する点があって、αとβの積であるγを表す点は、これらの偏角の和、すなわち、αの偏角から、さらにβの偏角分だけ、回転させた場所にあることがわかります。
もちろん、原点からの遠さは、αの動径とβの動径の積なので、ともに1より大きければ、αよりも、βよりも遠い点になりますし、もし、βの動径が1であれば、
αとγの原点からの距離(すなわち動径)は一致して、偏角だけが増減して、回転することになります。
掛け算なのに、偏角については和が出現するというのは、非常に特異な性質で、
複素数平面において極座標がもてはやされる理由がなんとなく腑に落ちる気がします。