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語源解説:印欧祖語とは

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印欧祖語は話し言葉

そもそも印欧祖語についての直接的な証拠はない。印欧祖語は話し言葉でしかないからだ。アナトリア仮説によると、前9000年頃からアナトリアにおいて話されていたのが印欧祖語だということだ。印欧祖語は、証拠の残っている言語から類推する形で理論上に再構築された言葉である。そのため、空想上のものである意味を「*」で示すことにしてある。

印欧祖語の音韻

子音について、日本人でもわかるようにまとめてある。

そもそも、音は、喉の「声帯」を使うか使わないかによって有声と無声に分けられる。

空気を流しながら発声するかどうかで、無気音と有気音に分けられる。有気音は発声直後に息漏れがする。

口を閉じ気味なら閉鎖音、開け気味なら開放音である。

鼻にかかるなら鼻音、こすれた音なら摩擦音である。

モーラとは、一定の持続時間に与えられる発音の単位長さのこと。

日本語においては、1つのモーラに対して1つの文字が与えられる。

半母音である「ゥワ」のときの「w」や「ィヤ」のときの「j」から分かるように、wやjは1つのモーラではない。

半母音は、摩擦音ではないが、上下の唇が「接近」しているので、「接近音」ではある。半母音は、ただちに後続の母音に連続していくものである。半母音そのものは、ほぼ持続せずに「常に動こうとする」ため、glide(わたり音)とも呼ばれる。

 

印欧祖語の分派

イメージとしては、トルコ(アナトリア)のあたりで発生。

東ヨーロッパであるバルト三国の「バルト語派」に分派。

スラヴ語派に分派。スラヴは地理としては東欧と西欧の一部を指すが、言語学的な分類。なお、東スラヴ語群はロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語を含む。西スラヴ語群は、ポーランド語、スロヴァキア語、チェコ語を含む。南スラヴ語群は、スロヴェニア語、マケドニア語、ブルガリア語を含む。

原始ゲルマン人は、いつからかは不明だが、前3000年頃には存在したと思われる。東はゴート族、バンダル族、ブルグント族、ランゴバルド族。西は、アングル族、サクソン族、フリース族、カッティ族。北は、ノルマン人に分けられる。

「古ゲルマン人」は、前2000年頃に、ユトランド半島や現代の北ドイツ周辺、そしてスカンジナビア半島(北部は寒くて住めない)に住んでいたと思われている。前1000年~前300年頃に南下しはじめた。

前200年頃からローマ領に入った。

後400年~500年頃に各地に移住して建国ラッシュが生じた。

さて、印欧祖語は、ゲルマン語派にも分かれた。北ゲルマン語群は古ノルド語、古スウェーデン語、古デンマーク語となった。西ゲルマン語群は古英語、古フリジア語、古オランダ語、古低地ドイツ語、古高地ドイツ語となった。東ゲルマン語群はゴート語となったが現在は消滅している。

ケルト語派は、ゲール語(スコットランド)、ブリソン諸語(ウェールズ語)になった。

イタリック語派は、ラテン・ファリスク語群(後にラテン語となり、そこからポルトガル語、スペイン語、プロヴァンス語、フランス語、イタリア語、ルーマニア語ができた)、オスク・ウンブリア語群となった。

他、印欧祖語は、アルバニア語派になった。

フリュギア語も別分類である。

ヘリニック語派は後のギリシャ語のみである。

アルメニア語派も単独である。

アナトリア語派は、リュキア語、リュディア語、ヒッタイト語、ルウィ語になった。

インド・イラン語派は、ダルド語派、インド語派(後にサンスクリット語となり、ヒンディー語などになった)、イラン語派(ペルシャ語、パルティア語、アヴェスター語など)に分かれた。

最後に、トカラ語派にも分派した。

このようにみると、英語を代表とするゲルマン語派と、ラテン語を代表とするイタリック語派、ロシア語を代表とするスラヴ語派、インド・イラン語派は、印欧祖語を元にしているとともに、かなり初期の時点から異なる流派であったことに気が付く。

英語とドイツ語が妙に似ているのも、同じゲルマン語派だからであると納得できる。