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順序集合を考える

数学
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順序集合(ℕ, 定義)という表記方法

順序集合は、もちろん順序が定義できる集合です。

たとえば、自然数集合が小さいものから順に{0,1,2,3,4,…}と並んでいるものは、順序集合として自然に理解できますが、しっかりと定義すれば、順序集合(ℕ、≧)と書けることにしましょう。

たとえば、順序集合(ℕ、≦)と定義してしまえば、0≧1といえてしまうことにしましょう。

順序集合(ℕ,|)を考える

|はIでもlでもありません。パソコンではフォントが似通っていてこまりますが、これは、約数の|です。余り0で割り算できる、の|ということにしましょう。

さて、順序集合(ℕ、|)の順序がどうなっているかを考えてみます。

自然数は途方もない数字になるので、その部分集合A

A={1,2,3,4,5,6,7,8}についての順序を考えます。

約数と順序をどう結び付けるかですが、少し定義を工夫しましょう。

部分集合Aの元n,mについて、m=nkとなるkが部分集合Aの元である場合は、例えば、元n=4については、k=1,m=4と、k=2,m=8の組があります。この場合、mの組み合わせは4と8になります。

極大元

この場合、通常の意味で「大きい」mを、「極大元」とよびましょう。

極大元は、すべてのnについて定義できることにしましょう。

つまり、n=1に対して、m=1,2,…,8となるので、やはりm=8が極大元です。

n=2に対してもm=8です。

n=3に対しては、m=3,6となるので、m=6が極大元です。

n=4のときはm=8、n=5のときはm=5,

n=6のときはm=6、n=7のときはm=7、

n=8のときはm=8が極大元です。

結局、極大元は、5,6,7,8ということになります。

 

極小元

極小元も定義しましょう。

極大元のときとは逆に、m=1のときのnを考えてみます。

m=1のとき、m=nkだから、n=1しかありません。よって、n=1を極小元とします。

m=2のときは、n=1,2なのでやはりn=1が極小元です。

m=3のときは、n=1,2,3

結局、すべてのmについて、n=1しか極小元になりませんので、極小元は1のみです。(ちなみに、mかnかは気にしないことにしましょう。極小元はn=1というよりも、単に、1という元です。)

順序集合(ℕ, |)の部分集合Aにおける最大元

さて、Aの元M(Maxからとっています)が、すべての元aに対してa | Mを満たせば、そのMを最大元とよびましょう。

ところが、明らかに、どの元も、すべての元を約数としてもちません。ということで、せっかく定義しましたが、この場合最大元は存在しません。

順序集合(ℕ、|)の部分集合Aが{1,2}であれば、2は1も2も約数としてもったので、最大元は2です。{3,6,12}であれば、最大元は12です。

順序集合(ℕ, |)の部分集合Aにおける最小元

最小元も定義しましょう。Aの元m(miniからとっています)が、すべての元aに対してm | aを満たせば、そのmを最小元とよびましょう。

これは明らかに、1が最小元です。例えば、部分集合{2,5,10}とかであれば、最小元はもちろん存在しません。

Aに対する順序集合(ℕ、|)の上限

Aは順序集合(ℕ、|)の部分集合です。

ここで、Aのすべての元を約数にもつAの元を最大元としましたが、無い場合もありました。では、そのようなℕの元を、Aに対する順序集合(ℕ、|)の上限、と定義してみましょう。

そうすると、結局この上限は、最小公倍数になります。

1=1, 2=2, 3=3, 4=2*2, 5=5, 6=2*3, 7=7, 8=2*2*2ですから(素因数分解しています。素因数分解については別記)

、結局、1*2*3*2*5*7*2=840が上限となります。840はもちろんAの元ではないですが、ℕの元です。

Aに対する順序集合(ℕ、|)の下限

上限と同じく、Aの元でなくても、ℕの元であれば良いということで、下限を定義してみましょう。

結果、下限は1ということになります。

自然数の集合ℕについての上限と下限の性質

順序集合(ℕ、|)において、部分集合A={a,b}の上限は、

当然、aとbの最小公倍数になります。

もちろん、下限は、最大公約数になります。

可換環Rのイデアル全体の集合を考える

可換環Rのイデアル全体の集合をイ全(R)とでも表してみましょう。

イデアル全体の集合という言葉がわかりにくいかもしれませんが、

簡単に、整数集合においては、

イデアル2倍「2の倍数の集合(実際に、どの元の和と差もイデアルの元で、どのイデアルの元ともとの整数集合ℤの元の積も、やはりイデアルの元になっています。)」

イデアル3倍「3の倍数の集合」

イデアル4倍「4の倍数の集合」

などがたくさん存在します。

ここで、順序集合(イ全(R)、⊆)を考えます。

A⊆Bとは、AとBが等しいか、あるいはAがBに含まれる、という意味です。

ただ、明らかに、ℤの元3は、イデアル2倍には含まれません。また、明らかにイデアル2倍は、イデアル4倍に完全に含まれます。

順序集合(イ全(R)、⊆)と書くと、ややこしく見えますが、

例えば、イデアルI,Jを考えて、

IとJの上限は、ここでの順序は、「含むこと」ですから、あらゆるイデアルを含むイデアルこそ、最強(最大)になります。

ということで、IとJの上限は、ここでは、I + Jになります。

なお、イデアルどうしの足し算の意味は、下記の通り(別記事)

イデアルどうしの和と差と積を定義する

可換環RのイデアルI,Jについて考えます。

I+Jと書けば、Iの任意の元aとJの任意の元bの和の集合ということにしましょう。

IJと書けば、Iの任意の元aとJの任意の元bの積の「有限和」の集合ということにしましょう。

とあるように、Iの任意の元aとJの任意の元bの和の集合となります。

例えば、2の倍数集合のイデアルと3の倍数集合のイデアルの、上限とは、

あらゆる2の倍数と、あらゆる3の倍数の和(もちろん0含む)の集合となっています。

正の整数で考えれば、確かに、2,3,4,5,6,7,8,9,…となり、2の倍数集合のイデアルと3の倍数集合のイデアルを完全に含んでいます。(というより、この場合は、ℤそのものになっています。)

 

では、IとJの下限はどうなるでしょうか。

下限とは、イデアルIとJがともに含むギリギリ大きな集合です。

結局、記号としてはI∩Jということになります。